荷揚げ屋は力を使わない?搬入のコツ8選

荷揚げ屋と言えば、力仕事というイメージが強いですよね。
実際に、荷揚げは力仕事なのですが、その中でも少しでも体の負担を減らすためのコツのようなものがあります。

本当に疲れ果てたときに、搬入効率の追求が始まります。

「どうすれば力を使わずに運べるだろうか」
「新人の荷揚げ屋さんをうまく活用できるやり方はないか」
「疲れない運び方、持ち方はないのか」
「もっと効率的に、もっともっとー、あーー」

そんな極限状態の中で荷揚げ屋はコツを習得してきました。
この記事では、荷揚げを効率的に行う為の8つのコツを伝授します。

荷揚げ屋さんはもちろん、自社で搬入を行っている職人さんも必見です。

荷揚げの全体像を知りたいならこちらの記事もおススメです↓
荷揚げのコツは全体像を把握することから

荷揚げ屋は力を使わない?搬入のコツ8選

重量物を扱う上での8つのコツを以下に示します。

  1. 揚重機を使えないか・省力化を考える
  2. 「運搬距離・運搬時間」を短くする
  3. 軽量化をする(一度に運ぶ数量・重さを減らす。分割する。)
  4. 体に近づけて持つ
  5. 大きな筋肉を意識して使う
  6. 滑らせて移動させる(長物は、足場や短管上を滑らせると省力化できる)
  7. 人員配置(年齢、身長、経験、性別)を適正にする
  8. 運び易い荷姿に成形する

1つずつ見ていきます。

その前に、

実はもう1つ「荷揚げで力を使わないコツ」があります。
それは。

運転手さんへ

すみませーん運転手さん、いつも手伝ってくれてありがとうございまーす!」

缶コーヒーを渡してマインドコントロールする方法です。
ほとんどの運ちゃんは手伝ってくれます。
日頃の感謝を缶コーヒーに込めて渡すだけです。
効果抜群の為、悪用厳禁です。
いつもありがとうございます、運転手さん!

1.揚重機を使えないか・省力化を考える

資材を運ぶ一番のコツは人力を使わないことです。
まずは機械・道具が使えないか考えます。

部分的にでも機械を使用して効率化できるのであれば、導入を検討します。
台車、ハンドリフト等の組み合わせでほとんど力を使わない荷揚げをすることもあります。

例えば40枚の石膏ボードを運ぶとき、「ハンドリフト」と「人力」を比較すると10倍の差です。

一度に運ぶ枚数運ぶ回数
ハンドリフト40枚1回
人力4枚10回
40枚の石膏ボードを運ぶときの「ハンドリフト」と「人力」の比較表

もし、一発で40枚石膏ボードを運ぶ方がいらっしゃったらすみません。

人間とフォークの連結部分は見せてくれない。

荷揚げ、搬入に使える設備類は以下のものがあります。
有資格者が必ず操作するようにしましょう。

  • 台車
  • トラック・自動車
  • ハンドリフト(ハンドパレット)
  • フォークリフト
  • クレーン
  • エレベーター
  • 高所作業車

まずは、現場に使える揚重設備がないか確認し、許可を取って使える環境を整備します。機器を活用できる様に動線を確保したり、段差を埋めるために鉄板を敷いたりします。

「揚重設備がない」又は「揚重設備の使用できないこと」を確認し、始めて「手運び」を検討します。
揚重機器等を使う際は、積載可能重量や使用方法を守ります。

2.「運搬距離・運搬時間」を短くする

重量物の手運びにおいて、1度の移動距離が長いとエネルギーの消費が大きくなります。

例えば、「50㎏の資材」を持って「10mを10回繰り返す」のと「100mを1回」では、後者の疲労の方が大きくなります。

連続した重量物の扱い時間・距離を短くできないか考えます。

  • 複数人でリレーできないか
  • 回り込みせず、開口部から差し込めないか
  • 上部へ差し上げの際は足元に台を設置し、揚げる距離を短くできないか
  • 置き場所のなるべく近くまでクレーンで降ろせないか
  • 床から一気に持ち上げようとせず、積み上げて高い位置から持つ
砂・セメントなど 一人当たりの運搬距離と移動時間を短縮できる。作業姿勢は左右変えたりして、腰を守りましょう。

作業員が複数いるのであれば、作業員の位置をあまり変えずに、材料を動かす方が速いこともあります。

軽い物を「重たっ」と言いながら、リレーすると、
受け取る人は「ニヤッ」として、次の人に「重たっ」と言ってリレーします。
アンカーが「軽いじゃねぇか!」と怒ったらすぐにやめましょう。
ちょっとしたチームワークを感じる事があります。

3.軽量化する

一度で運べないものは、分割したり、数量を減らしたりします。
分割、減量できない大きなものは、、、人を増やします。
人を増やせないから荷揚げのコツが必要なんですよね。。

4.体に近づけて持つ

材料は体から離れるほど、重く感じます。
体に密着するほど、軽く感じます。

同じ材料でも持つ位置を体に近づけると軽い。異性に渡す材料であれば、左の方が想いは伝わりやすい。
同じ材料でも体に近づけて持つ右の方が軽く感じる。ナイツの「はなわ」みたいなシルエット。

5.「腕」よりも「脚・体幹」を意識して使う

「腕の筋肉」より「脚・体幹筋肉」の方が大きい為、足を使うとより楽に搬入ができます。

「手で持つ」よりも「背負う」「肩で担ぐ」方が体の負担を減らすことができます。石膏ボードも横持ちするよりも、背持ちする方が比較的楽に運ぶことができます。軽量鉄骨材などの長物も、腕で持つより、肩に担ぐ方が体への負担は少ないです。

シルエットだけ見ると、結構危ない人の臭いがしますね。現場には本当は良い人が多いですよ。

6.持ち上げるよりも滑らせる

持ち上げて搬入するのには3つの理由がります。

  • 地面と摩擦があり、重量物が動かない
  • 摩擦により材料を傷つけてしまう
  • 段差等の障害物があり滑らせれない

以上の理由から持ち上げて荷揚げをすることが多くなります。

この3条件がない場合であれば、滑らせて移動した方が、目的地まで楽に到達することができます。

滑らせられる状況の例です。

  • 金属の材料と金属の手すり上を滑らせる
    (軽量鉄骨材をロングエレベーターに載せる際など)
  • トラック内のつるつるの床上で長尺シートを滑らせる、転がす
  • 石膏ボード・パーティクルボードの面を水平に滑らせる
  • 可搬式のローラーコンベア(ソロバン)でタイルを移動する
ローラーコンベアの画像
ローラーコンベアー(通称:そろばん)は摩擦を減らし、材料を傷つけず水平移動を楽にする。

7.人員配置(年齢、身長、経験)を適正にする。

荷揚げは複数人で搬入することがほとんどです。

作業の経験年数が長い人が、難しいポジションに着くことで、不測の事態に対応しやすくなります。

また、差し上げするとき背の低い人が下に来ると、上げる距離が遠くなります。
また、階段揚げをする際は、身長差や経験によって配置を変えないと、搬入しずらくなることがあります。

階段を什器を持って運ぶ図

下の人は、重たいですが運び易いです。
上の人は軽くなりますが、前方を見づらく運びずらいです。

上は後ろ向きで前進し、注意する箇所が多くなる為、ベテランが担当します。

また、上下での重量の偏りを無くすため、下に長身者、上に低身者を配置するすることもあります。こうすることにより、対象物が水平になり偏重が減ります。

長身者を下、低身者を上に配置すると、重さの偏りは少ない。親子で搬入するならこんな感じになるのでしょうかねぇ。家族っていいなぁ。はぁ。

他にも、台車を2人で押す場合は、ベテランが進行方向を決めるポジションに配置した方がスムーズにいきます。

8.運び易い荷姿に成形する

荷姿は運び易さに関わります。
小さな材料・部品・長物等はかさばらないようにし、
適切な材料で包装等し、できるだけ確実に把握できるようにします。

重量物を扱う人の為の筋肉豆知識

おまけでですが、筋肉の特性を知っておくと、重量物を楽に運べることもあります。

重量物の扱いは「速筋」という筋肉を使います。
筋肉には「速筋」と「遅筋」の2つがあり、それぞれ以下の様な特性があります。

筋肉はその構成する筋線維の性格から大きく下記の2種類に分けられます。
・パワーが高いが、持久性が低く、疲労しやすい「速筋」(筋力に関係)
・パワーは小さいが、持久性が高く、疲労に対する耐性が高い「遅筋」(筋持久力に関係)

筋力・筋持久力 e-ヘルスネット 厚生労働省

一瞬であれば、ある程度重い物を持つことできます。
しかし、重量物を繰り返し長時間持ち続けることは、速筋の性質上難しいということです。

持久力のない速筋を、長時間繰り返して使わなくていいように、荷揚げのコツがあります。複数人でリレーしたり、休憩を挟むなど工夫するとより、疲労を軽減できます。

荷揚げのコツまとめ

荷揚げのコツのまとめです。

  1. 機械を使って省力化する
  2. 運搬距離・運搬時間を短くする
  3. 重量物は体に近づけて持つ
  4. 軽量化する(一度に運ぶ数量・重さを減らす。分割する。)
  5. 滑らせて移動させる(長物は、足場や短管上を滑らせると省力化できる)
  6. 人員配置(身長、経験)を適正にする
  7. 運び易い荷姿に成形する
  8. 筋肉の特性を知り、重いものを持つ時間を極力短くする
  9. 運転手さんへの感謝を缶コーヒーに込める

あと、

搬入の全体像を把握し、次の工程を見据えた段取りをすると効率的に搬入することができます。段取り、全体像の把握はこちらの記事で紹介しています。

ここまで荷揚げのコツを紹介してきましたが、実際の現場は常に変化し続けます。エレベーターの運用や、最適な搬入経路は日々変化します。
昨日まで通用していた方法で搬入できないことも多いです。

自分の中で、「どの方法」「どの経路」が「安全」で「効率的か」を常に考え続けることが荷揚げのコツを掴む第一歩ではないでしょうか。

この記事を読んで荷揚げのコツをつかみ、安全で効率的な搬入を考えるきっかけになれば幸いです。

参考資料:職場における腰痛予防対策指針